臨時列車の運転が相次ぐ夏。帰省やお祭りなど、乗車率が高まる時期を見越した「増発」以外にも、車両に工夫を凝らし、「電車に乗ること」そのものがイベントとなる臨時列車も数多い。たとえばトロッコ列車。JR四国ではこの夏、3種のトロッコ列車を運行する。 しまんとグリーンライン（予土線）窪川駅～宇和島駅間には2種類のトロッコ列車が登場。「清流しまんと号」と「四万十トロッコ号」だ。いずれも定期列車に併結して運転され、夏休み期間中に一日一往復する。運転日は、「清流しまんと号」が水・木・金・土曜日。「四万十トロッコ号」が日・月・火曜日となっている。 各トロッコ列車とも発着は窪川駅～宇和島駅だが、実際にトロッコに乗車する区間はそれぞれ異なる。JR四国のホームページでチェックしてから出かけよう。長くトロッコ列車の旅を楽しみたいなら、窪川駅から宇和島駅まで全工程でトロッコ列車に乗れる「四万十トロッコ1号」がお薦めだ。

	トロッコ列車の醍醐味は、窓を取り払ったことによって実現する豪快なパノラマと、風を受けて走る爽快感に他ならない。しまんとグリーンラインを走るトロッコ列車では、蛇行する四万十川をはじめとした大自然と一体になることができる。 日本最後の清流といわれる四万十川は、否応なく夏の旅情を掻きたててくれる。ひとしきりトロッコ列車からの景観を楽しんだ後、途中下車するのも一興。川遊びはもちろん、ボートやカヌー、遊覧船や帆掛け船などを楽しんではいかがだろう。 また、発着駅の宇和島駅周辺の観光もお薦め。市街の中央に位置する宇和島城は、全国で12ヶ所しかない「天守閣が現存する城」のひとつ。また、他でなかなかお目にかかれない「闘牛」も宇和島名物。7月24日（火）には和霊大祭・七月場所として闘牛大会が開かれる。

今年の春に登場し、子ども達に大人気だった臨時列車「瀬戸大橋アンパンマントロッコ号」が、今夏再びお目見えする。外装はもちろん、車内にも人形やジオラマが配置され、まさにアンパンマン一色。これだけでも子ども達の喜びようが目に浮かぶが、瀬戸内海に浮かぶ島々を眼下に見下ろしながら、潮風を受けて走るトロッコ列車ならではの醍醐味も味わうことができ、子ども達にとっては「この夏いちばんの思い出」になること請け合いだ。 発着駅の琴平駅周辺は、門前町の風情が漂う街。見どころはなんといっても、琴平駅から徒歩20分の距離にある「讃岐のこんぴらさん」こと金刀比羅宮。登り口から御本宮まで785段、奥社までとなると1,368段に及ぶ石段は圧巻。その苦労ゆえ、参拝の御利益に授かれるというものだ。疲れた足腰は金刀比羅宮を中心に広がる「こんぴら温泉郷」でじっくりと癒そう。

区間：予土線 窪川駅～宇和島駅 運転日：夏休み期間中の日・月・火曜日

区間：予土線 窪川駅～宇和島駅 運転日：夏休み期間中の水・木・金・土曜日

区間：瀬戸大橋線 岡山駅・茶屋町駅～琴平駅 運転日：7月28日～8月26日

087-825-1626（JR四国 広報室）

http://www.jr-shikoku.co.jp/01_trainbus/event_train/schedule.htm

	■四国の列車といえばアンパンマン！ 今回紹介した「瀬戸大橋アンパンマントロッコ号」の他にも、四国にはアンパンマンをあしらった列車が数多く走っています。初代は2000年に登場。多度津駅～窪川駅間の土讃線を走りました。その後、高松駅から宇和島駅を結ぶ予讃線に「ばいきんまん号」「ドキンちゃん号」などが登場。また高知駅、松山駅、高松駅、徳島駅では駅弁「アンパンマン弁当」が売られています。

涼しげな自然の懐に抱かれる旅といえば、夏の東北地方。とりわけ青森・岩手・秋田の北東北三県では勇壮な夏祭りが相次いで始まり、歴史や文化に触れる旅を堪能することができる。この夏、自治体とJRグループが共同で実施する「北東北ディスティネーションキャンペーン」は、北東北の魅力をあますところなく味わえる旅の企画。旅路を彩る数々のイベント列車が、北東北の地を駆け抜ける。 「トロッコ風気動車」としてキハ48系を改造した臨時列車「風っこ」。木材をあしらった車内には大きな窓から文字通り風が吹き抜け、かの宮沢賢治が愛した東北の自然と一体になったかのような錯覚を抱かせてくれる。 北上駅から横手駅を結ぶ北上線には「風っこ よこて・きたかみ」。花巻駅から釜石駅を結ぶ釜石線には「風っこ イーハトーブ」。八戸駅と階上駅を結ぶ八戸線には「風っこ シーガル」がそれぞれ期日限定で登場する。いずれも車窓を楽しんでもらうため、全区間45キロ以下で運転。ゆったり、のんびりとイーハトーブの夏を満喫しよう。

世界遺産、白神山地をぐるりと取り囲むように走るのが、クルージングトレイン「リゾートしらかみ」。日本海に面したローカル線、五能線のルートを中心に、秋田駅～弘前駅と、秋田駅～青森駅の2ルートを運行する。車両編成は、写真左の「青池」と、「くまげら」「ぶな（木へんに無）」の3タイプで、運行期間は7月1日～9月30日。大きな車窓から夏の日本海と白神山地の景観を存分に味わうことができる。開放的な展望ラウンジにもぜひ足を運んでみよう。車両によっては津軽三味線の生演奏や、津軽弁「語りべ」の実演なども行われる。 さて、気になる夏祭り。青森駅周辺ではご存知「ねぶた祭り」が8月2日から7日まで開催される。一方、秋田駅周辺では8月3日から6日まで「秋田竿燈まつり」が開かれ、無数の提灯を下げた巨大な竿を男衆が担いで回る。「リゾートしらかみ」で秋田～青森間を行き来して、夏祭りの「はしご」としゃれ込んでみてはいかがだろう。

青森県八戸駅と大湊駅を結ぶのは今年で５周年を迎える臨時列車「きらきらみちのく下北号」。7月から9月末まで金・土日祝に運行される（7月16日～9月6日の期間中は毎日運行）。車両の外装には「弘前ねぷた祭り」「八戸三社大祭」「むつ田名部まつり」の絵が踊る。このうち「八戸三社大祭」は、同列車の発着駅でもある八戸駅を中心として開かれ、例年全国各地から観光客が訪れる。今年の開催日は7月31日～8月4日。豪華絢爛な山車が市街を練り歩き、東北の夏に彩りを添える。 さて、今回紹介した臨時列車の他にも、一ノ関駅～盛駅を走る「レトロむろね号」や、盛岡駅～岩泉駅を走る「秘境駅号」、秋田駅～鹿角花輪駅を走る「花輪ばやし号」など、祭りのアクセスに便利な列車や鉄道ファンが喜ぶ列車などが、臨時運転される。各列車の情報やイベントなど、北東北ディスティネーションキャンペーンサイトでチェックして、夏の北東北を旅しよう。

区間：東北本線 八戸駅～大湊線 大湊駅 運転日：7月1日～9月30日の金・土日祝（7/16～9/6は毎日運行）

区間：奥羽本線 秋田駅～（五能線経由）～青森駅・弘前駅 運転日：7月1日～9月30日

区間：風っこ よこて・きたかみ⇒北上線 北上駅～横手駅 　　　 　 　   風っこ イーハトーブ⇒釜石線 花巻駅～釜石駅 　　　 　 　   風っこ シーガル⇒八戸線 八戸駅～階上駅 運転日：詳細はこちら

050-2016-1600（JR東日本テレフォンセンター）

http://www.jr-morioka.com/kitatouhoku/train/index.html

	■「イーハトーブ」ってどんな意味？ 「イーハトーブ」とは、人工の国際語といわれるエスペラント語で「イワテ」の意。厳密には、そこに「理想郷」の意味を混ぜ合わせた言葉です。造語者は宮沢賢治。生誕地、花巻には宮沢賢治記念館や宮沢賢治童話村、宮沢賢治イーハトーブ館など、ゆかりの施設が複数あります。旅行前に童話を読み、イベント列車「風っこ」に乗り、その後で各施設を巡るプランはいかがでしょう。