読みモノ&レポート満載! 駅すぱ図書館

駅弁ひとり旅・こぼれ話

第54話

ねえ大ちゃん、同じ根室本線でも、
釧路の手前と先ではぜんぜん違うね。

どんな風に違うかな?

菜々 : 釧路までは、特急「スーパーおおぞら号」が、7両編成で走ってたのに、
釧路からは各停と快速だけ、それもたったの1両よ。
7対1よ。それにね、景色も変わった。
大介 : どんな風に変わったかな?
菜々 : うん。すごくなった。釧路までは、広い景色もあったけど、
サイロとか牧場とかあったじゃん。
こっち来たら、何もないんだもん。原生林と原野って感じ。
大介 : うん。ここ釧路と根室間は昔、といっても20年ぐらい前までは、
「根釧原野(こんせんげんや)」って呼ばれてたんだ。僕も学校ではそう習ったよ。
菜々 : それが今は?
大介 : 学校の教科書とか地図では「根釧台地(こんせんだいち)」。
菜々 : え? 原野と台地って、同じ意味なの?
大介 : 明らかに違うよ。でもね、原野って言葉は、遅れてることを意味するから文科省で
教育上相応しくないからって、台地に変えちゃったんだよ。
菜々 : えー、それって変。原野って呼ばれて傷つく人がいるわけ? 
むしろ日本にもまだ原野があったことは誇らしいわ。
大介 : そうだよね。せめて僕らだけは、原野のことは原野って呼ぼうよ。
菜々 : OK! ところで大ちゃん、原野見てたらお腹が空いちゃったよ。駅弁駅はまだ?
大介 : もうすぐだよ。厚岸駅さ。
菜々 : アッケシ? おもしろい名前ね、どんな意味? アッケシにも教せえて?
大介 : アッケシにも教せえてだって? 菜々ちゃんも古いんだか、新しいんだか。
厚岸はアイヌ語のアッケシイ、カキがいるところって意味だよ。
さあ、これが厚岸駅の名物駅弁「かきめし」さ。
菜々 : え? アッケシイ? カキがいるところ? だから駅弁も「かきめし」ですって?
まあ、よくできた話だわ。それに駅弁屋さんの名前も「氏家待合所」ですって。
これじゃ、当店はお待たせしますよ。でも待合室がありますからって言ってるみたい。
大介 : ハッハッハ! ほーら、厚岸発車したら厚岸湖が広がった。ここが牡蠣の産地だよ。
湖内には、牡蠣の貝殻が堆積した、大小80余りの牡蠣島があるんだ。
さらにその先が別寒辺牛湿原。線路以外に人工物はゼロだろ!
ここではね、高倉健さん主演の映画「網走番外地」が撮影されたんだ。
まさにここは原野だね。