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駅弁ひとり旅・こぼれ話

第99話

印籠弁当

ねえ、大ちゃん。水戸といえば、なんたって、水戸の黄門様よね。
そして水戸駅の駅弁もいろいろあるけど、最高傑作は「印籠弁当」! 
私、気に入っちゃったわ! この印籠!

ええい! 控えおろう、この紋所が目に入らぬか!

菜々 : 先の副将軍、水戸光圀公にあらせらるるぞ。
えい、頭が高い!ハッハッハ! お弁当箱で、こんなに遊べるなんて最高!
大介 : でもね、奈々ちゃん。話の腰を折るようだけど、実際には水戸の黄門様こと、
水戸藩主、徳川光圀公はテレビのように諸国を漫遊しなかったそうだよ。
菜々 : え! 本当?
大介 : うん。水戸と江戸との行き来のほかは、日光と鎌倉などに行ったくらいで、
関東から出た記録は残っていないんだ。
だって、水戸のお殿様なんだから、早々、お城を留守にできないよ。
菜々 : まあ、それもそうね。じゃ、どうして漫遊記が生まれたのかしら。
大介 : それはね、徳川光圀公が着手した歴史書『大日本史』編纂のために、
各地へ学者を派遣しているんだよ。
その一人が、助さんであり、格さんという説もあるんだ。
漫遊記は後の時代になって作られた物語かもしれないけど、
黄門さまが『大日本史』編纂のために全国各地に精通していたことは確かだね。
菜々 : 『大日本史』の編纂を始めたのはいつ頃のこと?
大介 : 明暦3年だから西暦1657年、352年前のことだね。
菜々 : それで、『大日本史』が完成したのは?
大介 : うん。完成させたのは徳川圀順さん。ずーっと後の明治39年、
ということは西暦1906年だから……。
菜々 : えー、249年よ。249年もかけて完成させたなんて、すごいね!
大介 : うん。まさに徳川家の力だね。
菜々 : ところで、テレビで助さんか格さんが、「この紋所が目に入らぬか!」って、
印籠見せるじゃない。あれって、この印籠弁当よりは小さいよね。
本物の印籠は中に何が入ってたのかな? まさかお弁当とか食べ物じゃないよね。
大介 : え? 食べ物だって? 惜しいな。
実はね、室町時代に明(今の中国)から伝来した当時は、
まさに印籠、印鑑と朱肉入れだったそうだけど、
やがて江戸時代になると薬入れとして重宝したそうだよ。
菜々 : あ、それじゃ、黄門さまの印籠の中も、きっとお薬が入ってたのね。
正露丸とかトンプクとかかな? 
ちゃっかり八兵衛、食いしん坊だから、正露丸は必需品よね。
大介 : それからね、黄門さまはグルメだったという記録も残っているんだよ。
特に、納豆とラーメンが有名だよ。
日本人で初めてラーメンを食べたり、納豆を広めたのが黄門様と言われている。
菜々 : その納豆が、今では水戸の代名詞、水戸納豆ね。
大介 : そうそう、水戸の駅弁には「納豆弁当」もある。
美味しい上にリーズナブルで、しかもヘルシーだよ。
菜々 : まさに、メタボな大ちゃん向きね。
大介 : ドテ!