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駅弁ひとり旅・こぼれ話

第84話

前沢牛めし・平泉義経

ねえ、大ちゃん、一ノ関駅の駅弁屋さんって、“前沢牛めし”の
「斎藤松月堂」と、
“平泉義経”の「あべちう」の2軒もあるんだね。

2軒どころか、数年前までは「伯養軒」もあったから1駅3業者だったんだよ。

菜々 : す、すごーい! 私は行ったことないけど、大きな駅なの?
大介 : う、うん……。大きいといえば大きいし、大きくないといえば大きくない。
菜々 : え? どーいうこと? 意味不明! もしかして大ちゃんのお腹のこと?
大介 : そう! ドスコイ、ドスコイ!って、違うってば。
東北新幹線の停車駅だから大きいといえば大きいけど、仙台や盛岡のように「はや
て・こまち」は停まらないから、大きくないといえば大きくない。人口も6万だよ。
菜々 : その仙台と盛岡の駅弁屋さんは?
大介 : ちょっと待って、駅弁業者の虎の巻「日本鉄道構内営業中央会」の営業一覧を見て
みるね。まず、仙台駅は「こばやし」と「伯養軒」、盛岡駅は「村井松月堂」と「
伯養軒」いずれも2業者だね。
菜々 : ってことは、一ノ関駅はちょっと前まで「伯養軒」もあったんだから、すごい!
大介 : うん。そうだね。「伯養軒」は東北地方をネットワークしてるから、純粋に地元の
業者2軒という一ノ関駅は、破格の駅弁駅ってわけだね。
菜々 : ねえ大ちゃん。例えば、東京駅は別格として、東京駅から東海道本線を西に向かう
と駅弁駅は、まず横浜駅が「崎陽軒」、大船駅が「大船軒」、小田原駅が「東華軒」
って、1駅1業者よね。NREは別として。それなにの、どーして一ノ関駅は、
複数なの?
大介 : それはね、東海道本線は国鉄だけど、東北本線は私鉄だったから。
菜々 : え? 私鉄ですって? ホント?
大介 :そうだよ。東海道本線は官営鉄道、つまり国鉄として開業したけど、東北本線や高
崎、上信越線、常磐線、つまり上野以北は日本鉄道という大手私鉄として開業した
んだ。山手線も国鉄に編入する前は日本鉄道だったんだよ。概ね今のJR東日本エ
リアだね。
菜々 : す、すごーい。山手線が昔は私鉄だったとは、知らなかった。分かった! 私鉄だ
から駅弁業者が複数認められたのね。
大介 :ピンポーン! 東海道本線は国鉄だから、1駅1業者しか認可せず、東北本線は私
鉄だから2者、3者に駅弁販売の免許を与えたのさ。
菜々 : それによって、いい駅弁ライバル関係になったわけね。私鉄らしいわ。
大介 :実はね、もう一つ理由があったんだよ。それはね、雪対策だよ。
菜々 :雪と駅弁が何か関係あるの?
大介 :それが、おおあり。当時は今と違って大雪が降ったんだ。1晩で1m、2mなんて
いうドカ雪が。その豪雪で列車が立ち往生するよね、そんな時、頼りになるのが駅
弁やさん。おにぎりの炊き出しだよ。緊急時に備えて駅弁業者も複数契約しておく。
菜々 : なーるほど。東北地方に美味しい駅弁が多いのも、私鉄だったお陰ね!