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駅弁ひとり旅・こぼれ話

第51話

ヒィーーーーッ しかし、歩くと遠かったなあ。新冠から静内まで、たった一駅なのに。日高本線のキロ程は、4.9 kmしかないけど、道路のほうは10kmはあったんで、ないかい?

10kmもあるわけ、ないっしょ。
線路と道路、ずーっと並んでたんだから。
まあ、道路がちょっと曲がってたから、せいぜい6kmよ。

大介 : だって、1時間は歩いたよ。ほら、時計みてごらんよ。
1kmを10分間で歩いたとしたら、1時間で10kmじゃんか。
菜々 : ブッブー! 大ちゃん。小学生に笑われるわよ! 1時間は何分なの?
大介 : え? 1時間は……、100 じゃなかった、60分、てことは6kmか。
ナハ、お恥ずかしい! 菜々ちゃんて、もしかして、数学の天才?
菜々 : なに、とぼけたこと言ってんの? 何も出ないわよ!
それより、大ちゃん、静内駅の駅弁「日高つぶめし弁当」って、すごいね。
お弁当箱が貝でいっぱい! 貝でご飯がぜんぜん見えないよ。この貝がつぶ貝?
大介 : うん。つぶ貝なんだけど、実はね、ツブって、巻き貝の俗称なんだ。長野県では田圃のタニシをツブって呼ぶ地方もあるんだよ。そして北海道では、エゾボラ 類、特にヒメエゾボラをさし、直に火で焼いて醤油をつけて食べるツブ焼きが郷土料理として有名なんだよ。その郷土料理をヒントにして生まれたのが、静内駅 の名物駅弁「日高つぶめし弁当」。つぶ貝の歯ごたえが、たまらないね!
菜々 : さすが、大ちゃん。高いところと計算は苦手だけど、食と鉄を語らせたら日本一!
大介 : ま、それほどでも!
菜々 : ねえ、大ちゃん。この「日高つぶめし弁当」のご飯は、炊き込みご飯だけど、
だしは何かな? わかる?
大介 : うん。ちょっと待って。一つはつぶ貝だね。もう一つは……、あれだ!
菜々 : アレダ? アデラ? アデランス?
大介 : 何を言ってるのかね、近ごろの雑誌編集者は、デスクの顔が見たいもんだ。
菜々 : デスクはどうでもいいから、あれだって、なーに?

※ ここで大介、日高本線走行中のキハ40の窓を一杯に開ける。そして、太平洋に向かって、

大介 : あ、れ、だーーーーーっ!

菜々 : キャー、何コレ? コワーイ!
大介 : 昆布だよ。日高昆布。昆布干しは、夏の日高の風物詩さ。
この「日高つぶめし弁当」の炊き込みご飯には、昆布のだしが効いてるね。
菜々 : なーるほど。昆布だったのか。ねえねえ、大ちゃん、「日高つぶめし弁当」の次は、
どんな駅弁かな?
大介 : 帯広駅名物、ぶた八の「豚どん」だよ。
菜々 : まー、「豚どん」ですって? 私の大好物。困っちゃうな、また太っちゃう。
大介 : 太っちゃう? もう十分、太ってるよ。