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駅弁ひとり旅・こぼれ話

第131話

新金谷駅「しまだ娘」

ねえ大ちゃん。井川線ってすごいのね! 
私、今まで、大井川鐵道
といえば、お茶とSLのイメージだったから、
実は井川線のトロッコ列車のこと、知らなかったのよ。

うん、そうだね。蒸気機関車だけであれだけ有名な
大井川鐵道だから、その先の井川線まで目が届かないもの。
無理もないよ。で、菜々
ちゃんは井川線のどこがすごいと思った?

菜々 : まず、レインボーブリッジでしょ。あの湖の上の駅行ってみたいわ。
それから、大ちゃんの苦手な関の沢橋!
大介 : な、菜々ちゃん、ちょっと、やめて! 
思い出しただけで腰がスースー、膝がガクガクしてくるから。
菜々 : キャッハッハ、ほんとに大ちゃんは高いところダメね。
鉄橋の話だけで震えてるんだから。
それじゃ、鉄橋じゃない井川線のすごいところが「アプト式」!
急勾配をスイスイ登れるんでしょ?
大介 : うん。井川線のアプト式は1000分の90! 日本一の急勾配だよ。
菜々 : 知ってるわ。1000m進む間に90m上昇するのよね。
ところで、アプト式のアプトって英語なの? 意味は? 
うちのお爺ちゃんは、漢字で書くと「阿武止(アブト)」式だって言ってたわ。
大介 : うーん、興味深いね。実はドイツ語で、発明したスイス人の名前だよ。
スペルはABTだから、英語読みすればアブトだけど、
ドイツ語でBは「プ」と発音するから現地に忠実ならアプトが正解だね。
でも、確かに年輩の人は「アブト式」って呼ぶ人多いね。
菜々 : お爺ちゃんもその一人ね。ところで、日本のアプト式はかつての信越本線の碓氷峠と、
現在は大井川鐵道だけだけど、スイスにはたくさんあるの?
大介 : もちろん! アプト式だけじゃなくて、リッゲンバッハ式、シュト ループ式、
ロッヒャー式の4種類あって、スイス全土に20以上のラック式登山鉄道があるそうだよ。
菜々 : さすがアルプスの国、スイスね。一番急勾配なのもスイスかしら?
大介 : うん。ピラトゥス鉄道。1000分の480だよ。
菜々 : え! 1000分の480ですって? 1000m行く間に480m上昇?
大介 : うん。具体的には1両の登山電車の長さが20mとすると、
電車の前と後ろ、つまり運転席と車掌室とでは高さが9.6mも違うのさ。
菜々 : ヒェー! 信じられない! それじゃ、床にバッグとか置いたらツーっと滑っていって、
気が付いたら全部後ろにいってたりして。
大介 : 大丈夫! 床は階段状になってストッパーがちゃんとあるから。
菜々 : よかった! 安心したらお腹空いちゃった! 
そうそう、井川線で大ちゃんたちが食べた新金谷駅の駅弁「しまだ娘」って、可愛いね!
大介 : うん! 大井川鐵道の地元、島田商業高校の高校生が島田の帯まつりをモチーフに創作した駅弁だよ。
菜々 : なーるほど。それで、掛け紙が着物と帯なのね。
中身は、着物がオムレツで、襟が海苔、帯はさくらデンブで、帯留めが干瓢……か。
考えてるね。
大介 : しかも旨い!
菜々 : え~? 大ちゃん、食べちゃったの?「しまだ娘」が可哀想!