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駅弁ひとり旅・こぼれ話

第102話

車販&神戸駅「トロッコ弁当」、水沼駅(水沼温泉センター)「白瀧姫の贈り物(泉弁)」

ねえ、大ちゃん。わたらせ渓谷鐵道の「トロッコ弁当」って、すごいね。
舞茸の天麩羅が大きすぎて、お弁当箱のフタが閉まんないんです
って?

「わ鐵」名物トロッコ弁当のことね。うん、おいらもびっくりしたよ。フタが閉まらない駅弁って、初めてだったからね。

菜々 : まあ大変。大きな駅で何百個も売れる有名駅弁のフタが閉まらなかったら、
積み上げた時に倒れちゃうもんね。駅弁が倒れたら大変よ!ご飯とおかずが
一緒くたになっちゃう。
大介 : ハッハッハ。まあ、フタが閉まらないほど大きなおかずを入れちゃうところが、
いかにも「わ鐵」らしくていいねえ。
菜々 : 素朴ってこと?
大介 : うん。手作りってこと。わたらせ渓谷鐵道はね、駅弁に限らず何もかも手作りって
感じがする。
菜々 : 素敵ね! 手作りの鉄道って。
大介 : いや、素敵のための手作りじゃないんだよ。山間を走る超ローカル鉄道だから、
潤沢な予算がないんだよ。必要から生まれた手作りってこと。
菜々 : トロッコ列車が走り、トロッコ弁当もあるし、水沼駅は駅が温泉とかで
楽しいそうだな、って思ってたけど、実は苦しいんだ。
大介 : うん。ほとんど毎年、決算時期になると、存続か廃止かが取り沙汰されるからね。
楽しそうに見えて、現実は厳しいのさ。
菜々 : そういえば、大介ちゃんが敬愛する鉄道紀行作家、宮脇俊三先生のデビュー作
「時刻表2万キロ」の、最後の路線が旧国鉄足尾線、現在のわたらせ渓谷鐵道
ですって?
大介 : うん。そうなんだよ。それも旧足尾線全線じゃなくて、最後の一区間の
足尾~間藤間だけ乗ってなかったそうだよ。
菜々 : 足尾~間藤間って何キロあるの?
大介 : 1.3キロ。
菜々 : たったの1.3キロ?
大介 : うん。最末端区間だから残っちゃったんだね。実はよくあることなんだよ。
ほら、終点まで行ったはいいが、明日朝まで列車は来ないし、駅は無人駅で
暖房すらなかったら、菜々ちゃんならどうする?。
菜々 : 凍え死ぬ。
大介 : だろ! 宮脇先生も、その時は、何らかの事情で終着駅の1.3キロ手前で
引き返さざるを得なかったんだろうね。
菜々 : でも、そのお陰で、わたらせ渓谷鐵道の足尾~間藤間が、「時刻表2万キロ」の
終着駅となったわけね。
大介 : だからこそ、わたらせ渓谷鐵道が廃止されては困るのさ。
菜々 : よーし、大いに乗って応援しようね!